特定事業所加算を取るための「研修体制」とは?個別計画の策定手順とテーマ例一覧
「特定事業所加算を算定したいけれど、個別研修のテーマが決まらない」
「毎年同じような研修になってしまう」
「個別研修を計画的に運用する体制がない」
特定事業所加算を取得するにあたって、このような悩みを抱えている訪問介護事業所の管理者やサービス提供責任者の方は多いのではないでしょうか。 登録ヘルパーを含む全ての訪問介護員等とサービス提供責任者について、一人ひとりの研修計画を作成し、それに沿って研修を実施することが求められます。
本記事では、法定研修との違いを整理した上で、対象者別に使える研修テーマ例と、無理なく続けるための記録・スケジュール管理のコツを解説します。
目次
法定研修だけでは取れない?特定事業所加算で求められる「研修」とは?
特定事業所加算の研修は、全職員が受ける法定研修とは別に求められるものです。
まずは両者の違いと、個別計画が必要とされる理由、加算取得のメリットを整理しましょう。
法定研修と加算要件の研修の決定的な違い
虐待防止や感染症対策、BCP(業務継続計画)などの研修は、加算の有無にかかわらず全ての事業所に義務づけられている「法定研修」です。一方、加算要件の研修は、国の通知(老企第36号)で、職員一人ひとりについて研修の目標・内容・研修期間・実施時期を定めた計画に基づいて行うことが求められています。
つまり、法定研修をどれだけ丁寧に実施しても、それだけでは加算の要件を満たせません。両者の違いは次のとおりです。
| 法定研修 | 特定事業所加算要件の研修 | |
|---|---|---|
| 目的 | サービスの基本水準の確保 | 職員の資質向上 |
| 対象 | 全職員に一律 | 職員一人ひとり |
| 計画 | 事業所全体の年間計画 | 個人ごとの研修計画 |
| 主な内容 | 虐待防止・感染症・BCPなど | 経験や課題に応じた専門的な内容 |
※スマートフォンでご覧の場合は、表を横にスクロールしてご覧いただけます。
※参考:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(老企36号)なぜ職員ごとの「個別研修計画」が求められるのか
研修が職員ごとに求められるのは、特定事業所加算が専門性の高い人材を確保し、質の高いサービスを提供する事業所を評価する加算だからです。 入職1年目のヘルパーと経験10年のサービス提供責任者では、伸ばすべき力がまったく違います。全員に同じ研修を行うだけでは、一人ひとりの成長にはつながりません。
運営指導でも、実施時期が書かれていない計画は、個別具体的な計画とはいえないと指摘されることがあります。
なお、職責や経験年数が近い職員をグループに分けて計画を立てることは認められています。
加算要件をクリアする「個別研修計画」の作り方とテーマ例
研修計画を作る際「スタッフ一人ひとりに合わせたテーマが思い浮かばない」という方もいるでしょう。
ここでは、対象者別のテーマ例を示したうえで、計画への落とし込み方を整理します。
対象者別の研修テーマ例一覧
個別研修計画のテーマは、経験年数や職責、習得してほしい分野などによって変わります。まずは自事業所の職員がどの層に当てはまるかを確認し、次の一覧から選んでみてください。
| 対象者 | 研修テーマ例 |
|---|---|
| 新人・若手 | 訪問先での緊急時の初動対応 客観的な事実が伝わる記録の書き方 ヒヤリハット報告の実務 利用者宅での接遇とプライバシー配慮 |
| 中堅 | BPSD(認知症の行動・心理症状)への具体的な対応 ご家族との面談・コミュニケーション技法 利用者ごとのリスクアセスメント 後輩へのOJT指導 |
| ベテラン | 事例検討会の進行役(ファシリテーション) 後輩職員へのスーパービジョン 医療職・リハビリ職との連携の推進 |
| サービス提供担当者 | 訪問介護計画の作成とモニタリング・評価 ヘルパーへの技術指導の手法 苦情・クレームへの初期対応 シフト管理と労務管理 |
| 重度者・医療的ケア対応 | 喀痰吸引等の手技と安全管理 |
※スマートフォンでご覧の場合は、表を横にスクロールしてご覧いただけます。
なお、感染症対策や虐待防止など法定研修と同じテーマ、資格取得時に学ぶ範囲と重なる内容は、加算の要件に合わないと判断されることがあります。 一覧のテーマをそのまま使うのではなく、「誰に、いつ、何をできるようになってほしいか」に置き換えていくのが次のステップです。
テーマを個別研修計画に落とし込む4つの必須項目
老企第36号では、訪問介護員等とサービス提供責任者それぞれについて、次の4項目を定めた計画の策定が求められています。- 目標
- 内容
- 研修期間時期
- 実施時期
目標については「認知症について学ぶ」では達成できたかどうかが判断できません。
「BPSDが現れた場面で、記録をもとに要因を挙げて報告できる」のように、達成度が客観的に分かる書き方にしましょう。
内容は選んだテーマを記載します。研修期間は、職員一人ひとりの技能や経験に応じて柔軟に設定できます。
実施時期は、実施する月まで具体的に書いておきましょう。
個別研修の最大の壁「記録管理とスケジュール調整」の負担を減らすには?
テーマと計画の形が決まっても、継続できなければ加算は維持できません。
ここでは、研修運用の負担を減らす方法について解説します。
要件漏れを防ぐには、計画と記録をまとめて管理する
個別研修計画は、登録ヘルパーを含む全職員分とサービス提供責任者分を毎年作成し、実施記録と紐づけて保管しなければなりません。 しかし、計画はExcel、実施記録は紙の議事録、シフトは別の管理表というように、書類が分散してしまうと計画どおりに実施できたのかを把握しづらくなります。実際の運営指導では、一部の職員の研修計画を作成しておらず、加算の算定が認められなかった事例があります。
この事例では、過去分について自主点検の上、過誤調整を行うよう求められました。
要件を1つでも欠けば、その期間の加算は算定できません。 計画・実施記録・評価を一か所にまとめ、誰の計画が未作成で、誰の研修が未実施かがすぐ分かる状態にしておくことが、返還リスクを避ける上で有効です。
日々の介護記録・業務管理をデジタル化する
研修管理だけを別に整えても、日々の業務が紙のままでは事務作業の総量は変わりません。土台となる介護記録や情報共有をデジタル化することで、研修管理に向ける時間そのものを生み出せます。
厚生労働省の調査研究事業では、訪問介護で記録票を電子化した結果、訪問実績の確認が省力化され、紙の保存量が月800枚減った事例が報告されています。 転記や書類の保管に費やしていた時間が空けば、その分を計画づくりや面談に充てられるでしょう。
また、記録から請求までがつながる介護ソフトを導入し、指示出しや報告もその中で行えば、実施状況が記録として残ります。
研修を「別途やる作業」から「日常業務の一部」に変えられれば、計画的な実施は続けやすくなります。
※参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」
まとめ
特定事業所加算の算定要件である個別研修は、法定研修とは別に、職員一人ひとりの目標・内容・研修期間・実施時期を定めた計画が必要です。 テーマは経験年数や職責に応じて選び、達成度が分かる目標に置き換えることが大切です。
ただし、計画をつくった後も、実施記録とセットで管理し続けられるかが加算維持の分かれ目になります。
介護記録ソフト「Care-wing(ケアウイング)」は、訪問介護の記録から請求までを一つにつなぎます。
記録に追われる時間が減れば、その分職員の育成に向けられます。まずは資料をダウンロードして、自事業所の運用と見比べてみてはいかがでしょうか。 ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
【ライター】 織田さとる
介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。
専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。
現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。
保有資格:ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師など。
介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。
専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。
現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。
保有資格:ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師など。
