【訪問介護】特定事業所加算とは?仕組み・要件を基本から解説
「特定事業所加算、うちの事業所は対象になるのだろうか」。訪問介護の管理者やサービス提供責任者から、こうした声をよく耳にします。 区分や要件が複雑で、どこから手をつければよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、特定事業所加算の基本的な仕組みと、区分(Ⅰ)〜(Ⅴ)の要件、届出のルールまでを整理してお伝えします。
目次
特定事業所加算とは
特定事業所加算は、専門性の高い人材を確保している訪問介護事業所を評価する加算です。
中重度の方や支援が難しいケースにも対応できる体制を整えていることが求められます(平成12年3月1日 老企第36号)。
体制要件・人材要件・重度者等対応要件の3つを満たすことで、区分に応じた加算率が所定単位数に上乗せされます。
訪問介護の収支差率は9.6%(令和7年度介護事業経営概況調査・令和6年度決算)。利益率が1桁台の事業にとって、所定単位数に最大20%が上乗せされる加算の重みは小さくありません。 単純計算で、月の訪問介護費が500万円なら区分(Ⅰ)で月100万円規模です。
令和6年度改定では基本報酬が引き下げられ、加算の組み立て方が収支を左右する要素になっています。
改定の背景はこちらの記事をご覧ください。
区分(Ⅰ)〜(Ⅴ)と加算率
特定事業所加算には5つの区分があり、令和6年度改定後の加算率は以下のとおりです。
| 区分 | 加算率 |
|---|---|
| (Ⅰ) | 20% |
| (Ⅱ) | 10% |
| (Ⅲ) | 10% |
| (Ⅳ) | 3% |
| (Ⅴ) | 3% |
区分(Ⅰ)〜(Ⅳ)はいずれか1つを算定し、区分(Ⅴ)だけは(Ⅰ)〜(Ⅳ)と併せて算定できます。
(Ⅰ)と(Ⅴ)の両方なら合計23%ですが、所定単位数への上乗せ率であって、売上が23%増える意味ではありません。
令和6年度改定では、区分の中身も大きく見直されました。従来の(Ⅳ)(加算率5%)は廃止され、旧(Ⅴ)の内容が新(Ⅳ)へ移行しています。 廃止された旧(Ⅳ)と新(Ⅳ)は、名称が同じでも中身が異なります。
あわせて、看取り期の対応実績を問う要件と、中山間地域等への対応を評価する区分(Ⅴ)が新設されました。
従来の「要介護3〜5等の利用者様が60%以上」という重度者対応要件は撤廃されています。
要件を満たしているつもりでも加算が取れていないケースは、こちらのQ&Aが参考になります。
3つの要件をわかりやすく
要件は「体制要件」「人材要件」「重度者等対応要件」の3つに分けられ、区分ごとに組み合わせが決まっています。
| 区分 | 加算率 | 体制要件 | 人材要件 | 重度者等対応要件 |
|---|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 20% | (1)〜(5) | (9)かつ(10) | (13)または(14) |
| (Ⅱ) | 10% | (1)〜(5) | (9)または(10) | ー |
| (Ⅲ) | 10% | (1)〜(5) | (11)または(12) | (13)または(14) |
| (Ⅳ) | 3% | (1)〜(5) | (11)または(12) | ー |
| (Ⅴ) | 3% | (1)〜(5)+(7)(8) | ー | ー |
※スマートフォンでご覧の場合は、表を横にスクロールしてご覧いただけます。
体制要件(1)〜(5):すべての区分に共通する土台
(1)訪問介護員等・サービス提供責任者ごとの研修計画の作成と実施、(2)おおむね月1回以上の会議の開催(テレビ電話装置等の活用も可)、(3)文書等による指示と、サービス提供後の報告、(4)登録ヘルパーを含む全員への年1回の健康診断(事業主負担)、(5)緊急時の対応方法の明示、の5つです。(3)の指示・報告は、手渡しのほかFAXやメールなどの方法が認められています。
報告の内容は、サービス提供責任者が電磁的記録を含む文書として保存しておく必要があります。
人材要件(9)〜(12):介護福祉士の割合か、経験年数か
(9)介護福祉士が30%以上(または介護福祉士・実務者研修修了者等が50%以上)、(10)すべてのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を持つ介護福祉士等であること、(11)常勤のサービス提供責任者を配置基準より1人以上多く配置していること、(12)勤続7年以上の訪問介護員等が30%以上であること、の4つです。区分(Ⅰ)(Ⅱ)では(9)(10)、区分(Ⅲ)(Ⅳ)では(11)(12)が問われます。
重度者等対応要件(13)(14):受け入れの実績を問う
(13)要介護4・5、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たん吸引等が必要な利用者の割合が20%以上、または(14)看取り期の利用者様への対応実績が1人以上、のいずれかです。(14)を選ぶ場合は、24時間の連絡体制や看取り方針の整備といった体制要件(6)もあわせて満たす必要があります。
区分(Ⅴ)では、人材要件と重度者等対応要件の代わりに、体制要件(7)(8)が加わります。
(7)は通常の事業の実施地域内にある中山間地域等に居住する利用者様への継続的な提供、(8)は多職種と共同した訪問介護計画の見直しです。 (7)の目安は、片道7kmを超える対象の利用者様が前年度または前3月の平均で1人以上いること。
特別地域加算等を算定する利用者様は実績に含めません。
要件を見ていくと、「この区分なら取れそうか」だけでなく、「この体制なら無理なく続けられそうか」という視点が欠かせないと感じます。その後も維持できるかどうかが、次の章のテーマです。
届出の基本と維持のルール
人材要件と重度者等対応要件の割合は、前年度(3月を除く)の実績で届け出るのが原則です。
開設してまもない事業所など、前年度の実績が6か月に満たない場合は、前3月の実績を用いて届け出ます。
前3月の実績で届け出た事業所は、届出後も前3月の職員または利用者様の割合を毎月維持することが求められます。
その割合は毎月記録し、所定の割合を下回った場合は、直ちに変更の届出を提出することが求められます。 こうした記録は、運営指導の際に要件を満たしている根拠にもなります。
様式は保険者所定の体制等状況一覧表など、自治体によって異なります。
「直ちに」の届出は事業所の自己申告に委ねられているため、運営指導で遡って要件割れが発覚し、届出の遅れが問題になるケースも考えられます。
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特定事業所加算における運営指導での注意点について
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リスク・注意点
特定事業所加算の取得は、そのまま増収につながるとは限りません。
区分によっては会議・研修・記録の運用に相応の事務負担が発生し、加算収入に見合わないと感じる事業所もあります。
要件を下回れば直ちに変更届が必要で、届出が遅れた期間については、加算の返還が生じる可能性があります。
もう一つ見落としやすいのが、利用者様の負担です。特定事業所加算は区分支給限度基準額の管理対象に含まれます。
加算分の自己負担が増え、限度額内に収まる訪問回数が減ることもあるため、ケアマネジャーとの調整が欠かせません。
背景には、訪問介護の深刻な人手不足があります。
介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査(令和7年7月28日公表)によると、訪問介護員の不足感は83.4%。
うち「大いに不足」「不足」と答えた事業所だけで58.1%を占め、調査対象の職種のなかで最も高い水準です。
サービス提供責任者の業務量を見ていると、研修計画や会議の記録、健康診断の管理は一人に集中しがちです。
ぎりぎりの人員体制で要件維持の事務作業まで担うのは、現実には難しいと感じます。
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訪問介護の特定事業所加算Q&Aについて
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まとめ
特定事業所加算は、届出をして終わりではなく、要件を満たし続けて初めて意味を持つ加算です。
研修の実施、会議の記録、指示・報告のやり取りといった日々の業務の積み重ねが、そのまま加算の土台になります。
要件を「続けられる仕組み」にすること。それが、基本報酬引き下げの中で収支を支える力になります。
介護職員等処遇改善加算は基本報酬と各加算の合計単位数をもとに算定されるため、特定事業所加算を取得すれば処遇改善加算の額も連動して増える計算になります。 区分や要件の複雑さに気後れせず、まずは自事業所が満たせそうな要件から確認してみてはいかがでしょうか。
要件を維持するうえで欠かせないのが、サービス提供責任者からヘルパーへの指示と、ヘルパーからの報告を記録として残しておくことです。 弊社が提供する「Care-wing(ケアウイング)」は、その指示・報告をシステム上で行い、記録の作成と保存を支援するサービスです。 運営指導の際に記録をすぐ確認できる点で、要件維持の負担を軽くする助けになると考えています(算定の可否は保険者へご確認ください)。
次のコラムでは、実際に加算を取得したあとに直面する「維持」の壁と、事務負担を減らすためのICT活用の考え方を、詳しくお伝えします。
ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
<ライター> 宮田 浩行
介護福祉士7年、看護師8年、計15年以上の医療福祉経験を持つ専門家。
介護老人保健施設、看護小規模多機能、訪問看護、有料老人ホームでの勤務を経て、現在は医療福祉分野のライターとして活動。 介護と看護の両資格を活かした現場目線のわかりやすい記事で、医療福祉従事者の課題解決と質の高いケアの実践に貢献。
介護福祉士7年、看護師8年、計15年以上の医療福祉経験を持つ専門家。
介護老人保健施設、看護小規模多機能、訪問看護、有料老人ホームでの勤務を経て、現在は医療福祉分野のライターとして活動。 介護と看護の両資格を活かした現場目線のわかりやすい記事で、医療福祉従事者の課題解決と質の高いケアの実践に貢献。
