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【令和3年度版】介護職員等処遇改善加算の算定要件 -キャリアパス要件・職場環境等要件


処遇改善加算は、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」の大きく2つの要件を満たす必要があります。
(Ⅰ)~(Ⅲ)のそれぞれの取得要件は以下の通りです。
区分 キャリアパス要件 職場環境等要件
加算(Ⅰ)
加算(Ⅱ)
加算(Ⅲ) ⅠかⅡのどちらか1つ
 

1.キャリアパス要件


まず最初のキャリアパス要件ですが、こちらはさらに(Ⅰ)~(Ⅲ)の3つに分かれています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

キャリアパス要件Ⅰ


次のイ、ロ及びハを満たすこと。

■イ…介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
■ロ…イに掲げる職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
■ハ…イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
この要件の趣旨は、「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること」です。

キャリアパス要件Ⅱ


次のイ及びロを満たすこと。
■イ…介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び一又は二に掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。

◇一…資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT 等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
◇二…資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。

■ロ…イについて、全ての介護職員に周知していること。

※「イ」の「一」と「二」に関しては、いずれか一つでOK!
この要件の趣旨は、「資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること」です。

「イ」の「一」でいう、「評価」は昇給・賞与や昇格などの処遇の決定のために行うものではありません。
あくまで”介護職員の職務遂行能力がどの程度向上したかを測定し、それを次の指導に生かすためのもの”です。

補足:キャリアパス要件Ⅱのポイント
キャリアパス要件Ⅱは、「イ」の「二」で『介護福祉士の取得』を中心に考えると効率がいいです!

理由は、以下のように他の加算を算定する時の要件を満たすことが出来るからです。

・特定処遇改善加算の算定を目指す場合、介護福祉士の取得が必要
・サービス提供強化加算や特定事業所加算を取得しやすくなる
・キャリアパス要件Ⅲを「資格に応じて昇給する仕組み」で満たそうとする場合、介護福祉士の資格取得、保有がその対象となる

キャリアパス要件Ⅲ


次のイ及びロを満たすこと。
■イ…介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次の一から三までのいずれかに該当する仕組みであること。
 ◇一…経験に応じて昇給する仕組み「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。
 ◇二…資格等に応じて昇給する仕組み「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。
 ◇三…一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。

■ロ…イの内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

※「イ」の「一」と「二」と「三」に関しては、いずれか一つでOK!

この要件の趣旨は、「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること」です。

具体的な仕組みをまとめると以下の通りです。

・「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み
・「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組み
・「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組み

補足:キャリアパス要件Ⅲのポイント
キャリアパス要件Ⅱで「イ」の「二」で『介護福祉士の取得』を中心に考える場合は、キャリアパス要件Ⅲでは「二」の『資格等に応じて昇給する仕組み』と連動させることで効率よく要件を満たすことが出来ます!

2.職場環境等要件

従来はこの区分は3つでしたが、令和3年度からは区分が6つに変更となりました。
これまでは『資質の向上/労働環境・処遇の改善/その他』の3つの区分があり、さらに細かく取り組み内容が定められていました。
・処遇改善加算…この6区分の中から1区分を選択し、そのうち1つ以上の取り組みを実施
・特定処遇改善加算…この6区分の中から3区分を選択し、それぞれ1つ以上の取り組みを実施

また、特定処遇改善加算においては、令和3年度は3区分だけで要件を満たすことが出来ますが、今後は6区分全てで取り組みを行う可能性が示唆されています。

さらにこれらの取り組みは、令和 3 年度介護報酬改定により、過去ではなく当該年度に実施することが必要とされておりますので注意が必要です。

では、その6区分とは何なのかを見ていきましょう。

1.入職促進に向けた取組


・法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
・事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
・他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築
・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施

2.資質の向上やキャリアアップに向けた支援


・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
・上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の確保

3.両立支援・多様な働き方の推進


・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
・有給休暇が取得しやすい環境の整備
・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実

4.腰痛を含む心身の健康管理


・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施
・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
・雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施
・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備

5.生産性向上のための業務改善の取組


・タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減
・高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化
・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備
・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減

6.やりがい・働きがいの醸成


・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた
勤務環境やケア内容の改善
・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供

3.まとめ


いかがでしたでしょうか。
今年の方改定で内容も大きく変わったので、これからの運用に問題がないかをしっかりと見直す時間を作りましょう。

また、1つの取り組みで複数の要件を満たすことが出来る場合もありますので、出来るだけコンパクトにすることで業務負担を軽減できるように見直しましょう。

参考:
厚生労働省『介護保険最新情報 Vol.935(令和3年3月16日)』
厚生労働省『処遇改善交付金制度のQ&A 平成22年3月30日付 厚生労働省老健局 事務連絡<介護職員処遇改善交付金に関するQ&A>キャリアパスに関する要件について』

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