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訪問介護の業務継続計画(BCP)とは?策定のポイントと対策を解説![感染症編]

目次
今回は2025年4月から未策定の事業所は減算(業務継続計画未策定減算)になるBCPについて解説です。
突然ですが、BCPの作成は完了していますでしょうか?
・大枠完成したが雛形を活用しただけなので、内容に自信がない
・作成にとても時間を要している
・自然災害などの影響で、実施記録などの書類が消失するのが怖い
上記の悩みをお持ちの事業所様はとても多いかと思います。
BCPの作成には平均3ヶ月かかると言われているので、早めに着手して見直しにもしっかり時間をかけることが重要です。
「業務継続計画(BCP)」で厚労省から発表されているガイドラインでは、大きく「自然災害」「感染症」の対策に分かれます。
この記事では、「感染症」における「業務継続計画(BCP)」の概要と策定のポイントについて解説いたします。
▼「自然災害編」はコチラ
「訪問介護の業務継続計画(BCP)とは?策定のポイントと対策を解説![自然災害編]」
業務継続計画(BCP)の概要
業務継続計画(BCP)とは?
BCPとは「Business Continuity Plan」の略で日本語では「業務継続計画」と表されます。
厚生労働省より2021年2月に発表され、すべての介護事業者が2024年3月末日までに策定することを義務づけられました。
業務継続計画(BCP)は、自然災害や感染症など不測の事態があった場合でも、「重要な事業を中断させない」「中断しても可能な限り早い時間で復旧させる」ための体制を整備するという観点から、すべての介護事業者への策定が義務づけられました。
厚生労働省が掲載している資料によると、下記の通りです。
“大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを業務継続計画(BCP)と呼ぶ。”
出典:「介護事業者における業務継続計画(BCP)について(厚生労働省老健局)」(P2)
なぜ、業務継続計画(BCP)の策定が必要か?
昨今、地震・水害などの大規模災害や、新型コロナウイルス感染症の流行などがみられる中で、そのような不測な事態が起こった際にでも、適切かつ迅速な対応を行う必要があります。
特に介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支える上で欠かせないと位置づけられています。
そのため、利用者に必要なサービスを継続的に提供できる体制を平常時から準備・構築することで不測の事態に備えておく必要があるのです。
「自然災害」と「感染症」で異なる対応の考え方
業務継続計画(BCP)の策定にあたり、大きく2つの観点があります。
1つは「自然災害」、もう1つは「感染症」です。
それぞれの考え方については、下記表をご参考にしてみてください。
業務継続計画(BCP)の策定[感染症]
ここでは、感染症時の業務継続計画(BCP)の策定について解説いたします。
対応のフローとしては大枠で5つあり、順を追って説明いたします。
0.平時対応
1.感染疑い者の発生
2.初動対応
3.検査
4.感染拡大防止体制の確立
0.平時対応
「0.平時対応」について、「体制の構築・整備」「感染防止に向けた取組の実施」「防護具、消毒液等備蓄品の確保」「研修・訓練の実施」「BCPの検証・見直し」の5つの観点で準備を進める必要があります。
平時対応時に準備を整えておくことで、不測の事態が発生した場合に適切な対応が取れるため、重要な項目となります。
下記に、対応する事項のリストをまとめましたのでご参考にしてみてください。
1.感染疑い者の発生
「1.感染疑い者の発生」について、体調不良者が発生した場合、新型コロナウイルス感染症の可能性を考え、速やかに対処する必要があります。
対応する際のポイントとしては以下の5つがあります。
- 息苦しさ、強いだるさ、発熱、咳、頭痛等の症状や嗅覚・味覚の異常等の症状がある場合、新型コロナウイルス感染症を疑い対応する。
- 感染の疑いをより早期に把握できるよう、毎日の検温や体調確認等 により、日頃から利用者の健康状態や変化の有無等に留意することが重要。
- 体調不良を自発的に訴えられない利用者もいるため、いつもと違う様子 (活動量の低下や食事量の低下等)にも気を付ける。
- 職員が発熱等の症状が認められる場合、出勤しないよう徹底する。
- 管理者は、日頃から職員の健康管理にも留意するとともに、体調不良を申出しやすい環境を整える 。
2.初動対応
「2.初動対応」について、「第一報」「感染疑い者への対応」の2つの観点で説明いたします。
(1)第一報
- 感染疑い者を発見した場合、誰が、いつ、誰に、どうやって、何を報告するのかを明記する。
- 感染が疑われる場合は、医療機関や受診・相談センター等に連絡し、指示を受ける。
- 各報告先への報告ルール(報告ルート、方法、内容等)を周知 し、全職員が速やかに対応できるようにする。
(2)感染疑い者への対応
- 居宅介護支援事業所と連携し、感染防止対策を徹底した上でサービスを提供することを検討する。
- 職員を分けての対応や最後に訪問するなど、対応ルールを記載する。
- 利用中に感染疑いが確認された場合の居宅介護支援事業所等への連絡や医療機関等への受診について、対応方法を記載する。
3.検査
「3.検査」について、以下の対応が必要となります。
また、検査結果を待っている間は、陽性の場合に備え、感染拡大防止体制確立の準備を行いましょう。
- 陰性の場合 :利用の継続
- 陽性の場合 :入院にあたり、可能な限り詳細に情報提供できるよう、必要な項目
(感染・濃厚接触の有無、症状の有無、現病・既往歴等)を整理する。
《検査結果の捉え方 》
- 検査の精度は 100% ではなく 、きちんと検体が採取できていない場合やウイルス量が少ない時期に検査し、陰性が出る場合もあることを理解する。
- 検査結果は絶対的なものではない ため、一度陰性であったとしても、感染が疑われることがあれば、再度相談する必要がある。
4.感染拡大防止体制の確立
「4.感染拡大防止体制の確立」について、「保健所との連携」「濃厚接触者への対応」「職員の確保」「防護具、消毒液等の確保」「情報共有」「業務内容の調整」「過重労働・メンタルヘルス対応」「情報発信」の8つの観点で準備を進める必要があります。
感染症においては、一度感染者が発生すると、その後の対応に追われてしまうことから「拡大させない」ことが、最も重要な取り組みといえます。
下記に、対応する事項のリストをまとめましたのでご参考にしてみてください。
まとめ
業務継続計画(BCP)の策定については、いかに「平常時に準備・体制作りができるか」が重要となります。
そのうえで、以下の考え方が重要となります。
- BCP作成時は、ひな形などを有効に活用する。
- BCP作成後は、定期的に訓練(シミュレーション)を実施し、職員への周知と課題を洗い出す。
- 課題を見直し、BCPの修正を繰り返すことで、施設・事業所に適したより良いBCPが作成できる。
事業所内でしっかりと準備をし、よりよい業務継続計画(BCP)の策定を心がけていただければと思います。
【参考資料】介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等について(厚生労働省)
以下より、「介護報酬改定とBCPのポイント」についてまとめた資料を無料ダウンロードいただけますので是非ご参考にしてみてください。