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訪問介護の業務継続計画(BCP)とは?策定のポイントと対策を解説![自然災害編]

2021/12/08

令和3年度介護報酬改定により「業務継続計画(BCP)」の策定がすべての介護事業者に対して義務付けられました。

2024年3月末日まで3年の経過措置とありますが、どのように策定して良いか悩まれている事業者様も多いのではないでしょうか?

「業務継続計画(BCP)」で厚労省から発表されているガイドラインでは、大きく「自然災害」「感染症」の対策に分かれます。

この記事では、「自然災害」における「業務継続計画(BCP)」の概要と策定のポイントについて解説いたします。

▼「感染症編」はコチラ
「訪問介護の業務継続計画(BCP)とは?策定のポイントと対策を解説![感染症編]」

【目次】
業務継続計画(BCP)の概要
業務継続計画(BCP)の策定[自然災害]
訪問介護における業務継続計画(BCP)のポイント[自然災害]
まとめ



業務継続計画(BCP)の概要

業務継続計画(BCP)とは?

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で日本語では「業務継続計画」と表されます。

厚生労働省より2021年2月に発表され、すべての介護事業者が2024年3月末日までに策定することを義務づけられました。

業務継続計画(BCP)は、自然災害や感染症など不測の事態があった場合でも、「重要な事業を中断させない」「中断しても可能な限り早い時間で復旧させる」ための体制を整備するという観点から、すべての介護事業者への策定が義務づけられました。

厚生労働省が掲載している資料によると、下記の通りです。

“大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを業務継続計画(BCP)と呼ぶ。”

出典:「介護事業者における業務継続計画(BCP)について(厚生労働省老健局)」(P2)


なぜ、業務継続計画(BCP)の策定が必要か?

昨今、地震・水害などの大規模災害や、新型コロナウイルス感染症の流行などがみられる中で、そのような不測な事態が起こった際にでも、適切かつ迅速な対応を行う必要があります。

特に介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支える上で欠かせないと位置づけられています。

そのため、利用者に必要なサービスを継続的に提供できる体制を平常時から準備・構築することで不測の事態に備えておく必要があるのです。


「自然災害」と「感染症」で異なる対応の考え方

業務継続計画(BCP)の策定にあたり、大きく2つの観点があります。
1つは「自然災害」、もう1つは「感染症」です。

それぞれの考え方については、下記表をご参考にしてみてください

【「自然災害」と「感染症」における考え方の違い】
項目 自然災害 感染症
事業継続方法 ・できる限り事業の継続・早期復旧を図る
・サービス形態を変更して事業を継続
・感染リスク、社会的責任、経営面を勘案し事業継続のレベルを決める
→正確な情報を基に的確に判断する
被害の対象 ・主として、施設・設備等、社会インフラへの被害が大きい ・主として、人への健康被害が大きい
→業務継続は、主にヒトのやりくりの問題
地理的な影響範囲 ・被害が地域的、局所 ・被害が国内全域、全世界的となる
事業継続方法 ・できる限り事業の継続・早期復旧を図る
・サービス形態を変更して事業を継続
・感染リスク、社会的責任、経営面を勘案し事業継続のレベルを決める
→正確な情報を基に的確に判断する
被害の期間 ・過去事例等からある程度の影響想定が可能 ・長期化すると考えられるが、不確実性が高く影響予測が困難
被害発生と被害制御 ・地震の場合は兆候がなく突発する
・被害量は事後の制御不可能
・海外で発生した場合、国内発生までの間、準備が可能
・被害量は感染防止策により左右される
→感染防止策が重要
事業への影響 ・事業を復旧すれば業績回復が期待できる ・集客施設等では長期間利用者が減少し、業績悪化が懸念される




業務継続計画(BCP)の策定[自然災害]

ここでは、自然災害時の業務継続計画(BCP)の策定について解説いたします。

対応のフローとしては大枠で5つあり、順を追って説明いたします。

1.総論
2.平常時の対応
3.緊急時の対応
4.他施設との連携
5.地域との連携


1.総論

業務継続計画(BCP)の策定にあたり、まずは全体の体制を整備する必要があります。

「1.総論」では以下の対応が必要となります。

1.基本方針 ・何のために BCP に取り組むか を明確にする。
例)1.利用者の安全確保、2.職員の安全確保、3.サービスの継続
・一般的に3 日間乗り切れば外部から支援を受けることができると想定。
⇒3 日間の初動対応が重要。
2.推進体制 ・リスク分散のため多くの部門が関与することが効果的。
・各事業所の実状に即して、既存の検討組織を有効活用する。
3.リスクの把握 ・自治体などが公表するハザードマップなどを活用する。
・自治体から公表されているインフラ等の被害想定 から自施設の設備等を勘案して時系列で影響を想定することも有用。
4.優先業務の選定 ・被災時に限られた資源を有効に活用するため、優先する事業や業務について選定。
・優先業務の洗い出しとともに最低限必要な人数 についても検討しておくとよい。
災害時であっても、生命を維持するための業務は休止できない ことに留意。
5.研修・訓練の実施BCPの検証・見直し ・計画内容に沿った研修や訓練 を行い、改良していく。
・最新の動向をBCPに反映させるなど、 定期的に見直しを行う。
・BCPに「更新履歴」の項目をつくっておくとよい。


2.平常時の対応

「2.平常時の対応」では「自施設の安全対策」「ライフライン等の事前対策」「災害時に必要となる備蓄品等の確保」の3つの観点で準備を進めていく必要があります。

介護サービスを中断させないためには、介護サービス提供のために必要な要素(建物・設備、ライフライン)を守ることが重要です。

下記に、対応する事項のリストをまとめましたのでご参考にしてみてください。

1.建物・設備の安全対策 □建物の建築年を確認し、1981 年以前の建物は耐震補強を検討する。
□設備・什器類の転倒・転落・破損等の防止措置を講じておく。
□建物や設備類が浸水する危険性を確認し、対応策を記載する。
2.電気が止まった場合の対策 □被災時に稼働させるべき設備を記載する。
□「電気の確保策」「電気の代替策」の現状確認と対応策の検討を行い、記載する。
3.ガスが止まった場合の対策 □被災時に稼働させるべき設備と代替策を記載する。
4.水道が止まった場合の対策 □「飲料水」「生活用水」に分けて、それぞれ「確保策」「削減策」を記載する。
5.通信が麻痺した場合の対策 □被災時に施設内で実際に使用できる方法(携帯メール)などについて、使用可能台数、バッテリー容量や使用方法等を記載する。
□利用者家族や職員、関係機関などの緊急連絡網を整備しておく。(携帯電話/携帯メール/PH/PC メール/SNS 等)
6.システムが停止した場合の対策 □電力供給停止などによりサーバ等がダウンした場合の対策や、データ類の喪失に備えてバックアップ等の方策を記載する。
7.衛生面(トイレ等)の対策 □「利用者」「職員」双方のトイレ対策や汚物の処理方法を記載する。
8.必要品の備蓄 □被災時に必要な備品はリストに整理し、計画的に備蓄する。
□行政支援開始の目安である被災後3日目まで、自力で業務継続するための備蓄を行う。
□備蓄品によっては、賞味期限や使用期限があるため、担当者を決めて、定期的にメンテナンスを行い、リストを見直す。
□感染対策に係る資材、防護具等についても在庫量・必要量の管理を行い、数日分の備蓄を行うことが望ましい。
9.資金手当て □災害に備えた資金手当て(火災保険など)や緊急時に備えた手元資金等(現金)を記載する。


3.緊急時の対応

「3.緊急時の対応」では「初動対応の事前対策」「人命安全確保対策の徹底」「災害時に必要となる備蓄品等の確保」「復旧対応」の4つの観点で準備を進めていく必要があります。

職員が不足し、ライフラインが停止することを踏まえ、重要業務をいかに優先して取り組むかがポイントです。

下記に、対応する事項のリストをまとめましたのでご参考にしてみてください。

1.BCP発動基準 □地震の場合、水害の場合等に分けてBCP を発動する基準を記載する。
2.行動基準 □災害発生時の職員個人の行動基準を記載する。
3.対応体制 □対応体制や各班の役割を図示する。代替者を含めたメンバーを検討し、記載する。
4.対応拠点 □緊急時対応体制の拠点となる候補場所を記載する。(安全かつ機能性の高い場所に設置)
5.安否確認 □利用者の安否確認方法を検討し、整理しておく。
□非番を含む職員の安否確認方法を複数検討し準備しておく。
6.職員の参集基準 □発災時の職員の参集基準を記載する。なお、自宅が被災した場合など参集しなくてもよい場合についても検討し、記載することが望ましい。
□地図を活用し、被災時に徒歩で参集可能な職員数を確認する。
7.施設内外での避難場所・避難方法 □地震などで一時的に避難する施設内・施設外の場所を記載する。
□津波や水害などにより浸水の危険性がある場合に備えて、垂直避難の方策について検討 しておく。
8.重要業務の継続 □インフラ停止、職員不足、災害時の特有業務の発生などの理由から、業務量が増大することが考えられる。
□平常時の対応で選定した優先業務から特に重要な業務の継続方法を記載する。
□被害想定(ライフラインの有無)と職員の出勤率とを合わせて、時系列で記載すると 整理しやすい。
9.職員の管理 □職員は極限の状況で業務を続けなければならないことが想定される。
□少しでも職員の負担が軽減できるよう職員の休憩・宿泊場所の確保や、利用者分だけではなく職員分の備蓄を揃えるなど、職員に対する準備をする。
10.復旧対応 □復旧作業が円滑に進むように施設の破損箇所の確認や各種業者連絡先一覧を整備しておく。


4.他施設との連携

「4.他施設との連携」では、「連携体制の検討」「連携体制の構築」「連携対応」の3つの観点で準備を進める必要があります。

不測の事態が発生した場合、自事業所のみでは解決できないこともありますので、相互支援できるよう他施設との連携・協力関係を普段から構築しておくことが重要です。

下記に、対応する事項のリストをまとめましたのでご参考にしてみてください。

1.連携体制の構築 (1)連携先との協議
(2)連携協定書の締結
(3)地域ネットワーク等の構築・参画
2.推進体制 (1)事前準備
(2)利用者情報の整理
(3)共同訓練


5.地域との連携

「5..地域との連携」では、「被災時の職員派遣」「福祉避難所の運営」の2つの観点で準備を進める必要があります。

社会福祉事業の公共性を鑑み、事業所が存在する地域貢献を行うことも重要な存在意義の一つと考えられます。

被災時に地域住民や地域社会に対して何らかの支援を検討することも重要となります。

下記に、対応する事項のリストをまとめましたのでご参考にしてみてください。
 
1.被災時の職員派遣 (1)災害福祉支援ネットワークへの参画や災害派遣福祉チー ムへの職員登録  
2.福祉避難所の運営 (1)福祉避難所の指定
(2)福祉避難所開設の事前準備


訪問介護における業務継続計画(BCP)のポイント[自然災害]

これまでは、介護業界全体の業務継続計画(BCP)について解説してきましたが、訪問介護において注意するべきポイントはどこにあるのでしょうか?

「平時からの対応」「災害が予想される場合の対応」「災害発生時の対応」3つの観点に分けてご説明いたします。

1.平時からの対応
  1. ・サービス提供中に被災した場合に備え、複数の連絡先や連絡手段を把握しておく。(固定電話、携帯電話、メール等)
  2. ・居宅介護支援事業所と連携し、利用者への安否確認の方法等をあらかじめ整理 しておく。
  3. ・発災時に、職員は利用者宅を訪問中または移動中であることも想定し、対応中の利用者への支援手順や、移動中の場合における対応方法 をあらかじめ検討しておく。
  4. ・避難先においてサービスを提供することも想定されるため、平常時から地域の避難方法や避難所に関する情報に留意し、地域の関係機関(行政、自治会、職能・事業所団体等)と良好な関係を作るよう工夫する。

2.災害が予想される場合の対応
  1. ・台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、サービスの休止・縮小を余儀なくされることを想定し、あらかじめその基準を定めておく 。
  2. ・居宅介護支援事業所にも情報共有の上、利用者やその家族にも説明した上で、必要に応じてサービスの前倒し等も検討する。

3.災害発生時の対応
  1. ・サービス提供を長期間休止する場合は、居宅介護支援事業所と連携し、必要に応じて他事業所の訪問サービス等への変更を検討する。
  2. ・あらかじめ検討した対応方法に基づき、利用者への安否確認や、利用者宅を訪問中または移動中の対応を行う。
  3. ・居宅介護支援事業所や地域の関係機関と連携の上、可能な場合には、避難先においてサービスを提供する。


まとめ

業務継続計画(BCP)の策定については、いかに「平常時に準備・体制作りができるか」が重要となります。

そのうえで、以下の考え方が重要となります。

1.BCP作成時は、ひな形などを有効に活用する。
2. BCP作成後は、定期的に訓練(シミュレーション)を実施し、職員への周知と課題を洗い出す。
3. 課題を見直し、BCPの修正を繰り返すことで、施設・事業所に適したより良いBCPが作成できる。


事業所内でしっかりと準備をし、よりよい業務継続計画(BCP)の策定を心がけていただければと思います。

【参考資料】介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等について(厚生労働省)

以下より、「介護報酬改定とBCPのポイント」についてまとめた資料を無料ダウンロードいただけますので是非ご参考にしてみてください。

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