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【後編:事例と統計で確認】今すぐ進めるべき、人材定着に繋がるハラスメントの予防と対策



皆さんの事業所では職員に寄り添った事業所運営ができていますか? 人材不足が増加する今、新しい人を採用することと併せて検討すべきことは、「今働いている職員の方にどうやったら長く勤めてもらえるか」という点だと思います。

一緒に働いている介護の技術や知識のある職員の方の中には、きっと様々な悩みがあるかと思います。
そんな悩みの1つに「ハラスメント」があります。

今回は前回に引き続き、現在増加傾向にあり、職員の定着にも影響があるため、年々問題視されている、「ハラスメント」について、ハラスメントの傾向と対策について、統計や事例を交えながらご説明します。

ハラスメントについてはマニュアル整備をする必要があり、運営指導などでも確認されることがあります。
是非、職員の方の働きやすい職場づくりのためにも、ハラスメント対策を真剣に検討しましょう。


調査から見える、ハラスメントの実態


実際に現場でのハラスメントの実態について、日本介護クラフトユニオンの「2024年度就業意識実態調査」の結果から以下のような状況が見えてきました。 (参考・引用:日本介護クラフトユニオン「2024年度就業意識実態調査」)

Q:どんなハラスメントを受けたか

精神的暴力 74.2%
身体的暴力 36.1%
セクハラ 31.1%


▶ハラスメント事例
  • あからさまに性的な話をされる。
  • 他の職員との比較や職員自身への侮辱。
  • 介護保険上できないサービスを拒否した際に、正座を強要され15分間怒鳴られた。
  • また、利用者と家族のハラスメントの割合としては、利用者からのハラスメントが大きいとのことでした。

Q:(ハラスメントを受けたと回答した人のうち)離職しない理由は?

他の職員に迷惑をかけるから 27.5%
担当を変えてもらったから 14.0%
介護の仕事が好きだから 13.5%


上記の3つ以外で、最も多かったのが「その他」が33.7%でした。
その理由の約3割は以下のような「我慢」「諦め」の内容でした。
  • 我慢している
  • 諦めた
  • 認知症なのでしょうがない
  • 異動した
「その他」の中にはハラスメントが改善した以下のような回答が約1割ありました。
・上司が対応してくれた
・家族から謝罪された

この結果から見えるのは、従業員の我慢の上に事業が成り立っているという現実でした。
またハラスメントの悩みについて、声を上げられない職員の方もいるかもしれません。
ハラスメントを起点に退職者が出ないような、職場環境の整備が急務とも言えるでしょう。

ハラスメントの要因に結びつく可能性のある事柄から先回りの対策を進める


【ハラスメントの要因に結びつく可能性のある事柄】
  • 高齢、病気、障害等の理由により、介護が困難な家族が介護を行う。
  • 家族の心身の疲れ等から、家族による介護体制が限界にある。
  • 主たる介護を担う家族が、外部との適切なコミュニケーションが取れない。
  • 利用者や家族等からの意見・要望・苦情等を受けた際の対応(プロセス、態度、やりとり等)が
    不適切だった。
  • 事故を起こしてしまった後の事業者としての対応(姿勢、応対、対応者を当事者から本部等に移すまでの時間等)が不適切だった。
  • (同性介護が可能な環境において)同性介護の必要性が高い利用者に対し、同性介護が徹底されなかった。
  • 介護保険制度や提供サービスについて、利用者や家族等の理解を得られていない。
    利用者や家族等が、提供されるサービス内容等に納得できていない。
  • 過去の行動歴等、利用者や家族等に関する情報収集ができていない。
    (例:暴力行為や攻撃的な言動 の有無、過去に他の事業者とトラブルが生じていた 等)
  • 面会時間等の施設・事業所のルールに対し、家族が守らないことを容認してしまった。
  • ハラスメントまたはその疑いのある言動が最初に発生した段階で、適切に対応できなかった。
引用:令和2年度 厚生労働省 老人保健事業推進費等補助金 (老人保健健康増進等事業分)
介護現場におけるハラスメント事例集 令和3年3月 株式会社三菱総合研究所

法人としての予防・対策のための取組を自社に置き換え検討を始める


ハラスメント対策と言っても、他の事業所(法人)ではどのように取り組んでいるのでしょうか?
以下の取り組みを参考にご自分の事業所の体制づくり・環境づくりを検討してみましょう。

A社の場合

■ 組織として報告・相談の体制づくり


職員は利用者やその家族に寄り添わなければという意識が強く、問題が起こっても1人で抱え込んでしまう傾向にある。
A社では、様々な相談ルートを用意し、職員が報告・相談しやすい環境づくりを行っている。

<取り組んでいる環境づくりの例>
〇上長を窓口とした相談体制(マネジメントラインへの報告ルートを明確化)
〇上長以外での相談ができるように電話相談の開設
〇利用者からの困り事も報告・相談してよい、ということを職員が理解するよう、年2回全職員を対象に実施する利用者への虐待防止のチェックリストの項目に、利用者からの暴言・暴力の項目を追加 (以前よりも匿名で報告が上がるようになった)
〇月に1度、各施設で実施している虐待防止委員会においても、職員から寄せられた困り事を取り上げ、ハラスメントの防止への取組

■ハラスメントが発生した場合の、組織の対応方針 実際にハラスメントに対応する際は、
以下の2点を重視して取り組む。


「現場任せにせず組織として対応する」
組織として対応する姿勢を示す、組織としての意思を明確かつ正確に示す手段の1つとして、当該利用者等へ文書(起こった事象とそれに対する対応を整理し たもの)を出すこともある。

「毅然とした対応を行う」
事故対応に起因して発生したハラスメント等、複数の問題が絡み合うこと

B社の場合

■より気軽に相談しやすい環境づくり


B社では、ハラスメントに限らず、働き方や職場での困り事の報告・相談先として「従業員相談窓口」を 設置している。
管理者を通さず人事総務部宛に、電話またはメールで相談することができる(匿名可)。

また、「従業員相談窓口」について、休憩室や更衣室等に案内を掲示して周知している。 相談された内容は本部に共有され、内容に応じて様子見や実際の対応の検討を行っている。

個人や事業所だけでは解決できないハラスメントの問題もある


利用者や家族からのハラスメントは、ヘルパーの負担だけでなく、サービスを行えなくなるなど、事業所だけでは対応しきれないこともあるかと思います。 そんな時は、事業所からケアマネに相談すると、地域包括などと連携をしてもらうことができるかもしれません。

また家族からのハラスメントがネグレクトなどに繋がる事例もあるので、自分達(事業所)だけで解決しようとせず、解決方法を各所と連携を取りながら導くことも重要といえます。 事業所の方針で職員の方の環境を守り、長く働きやすい環境をつくっていきましょう。



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