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行政書士が教える!訪問介護の指定申請の注意点と開業成功のポイント
訪問介護事業に従事していて、「独立したい」と思ったり、他事業から「訪問介護事業に進出したい」と思ったことはありませんか?
介護市場の大きなメリットは、売上の9割(本人負担1割の場合)を確実に国(介護保険)から得ることができるため、売上金をほぼ確実に回収できることです。 それは経営者としては非常に安心できる大きな魅力の1つではないでしょうか。
今回は、訪問介護の開業と運営の支援で経験豊富な「合同会社織都」の本多雄一先生(行政書士)に監修いただき、訪問介護事業を始めようと思った方へわかりやすく、指定申請や開業のポイントをご説明いたします。
目次
事業計画
まず、何かの事業を始めるには、一般的に「人」「物」「金」の計画を立てる必要があります。
これは指定申請における「人員基準」「設備基準」「運営基準」につながるものです。
これを訪問介護事業に当てはめて表にすると、以下のようになります。
初めて事業を営む人にとっては難しいかもしれませんが、弊社では開業の準備に関わる専門家をご紹介することも可能です。
法人設立までの準備
介護保険法により、介護事業者は法人であることが求められていますから、個人で介護事業を行うことはできません。
そのため、初めに法人を設立する必要があります。
法人格の取得(法人の種類を決める)
法人の種類はいくつもありますが、介護事業で多いのは株式会社や合同会社です。いずれも一人でも設立できます。まず、株式会社にするか、合同会社にするかを考えましょう。
定款を作成する
会社の名前や住所などを定めますが、その他にも定めるべき内容が法律で決められています。 ネットでひな形を探すことはできますが、そのひな形が正しいかどうか、開業する会社にマッチしているかどうかの判断が難しい場合もあります。自治体の窓口に相談することもできますが、例えば、決算期はいつにしようか、資本金はいくらがよいのかなども含め、専門家に相談することで開業全体のアドバイスを受けることもできます。
登記申請を行う
最後に登記申請を行いますが、先ほどの定款も含めて適正な書類を準備し、法務局へ提出する必要があります。ご自身で登記申請ができない場合、司法書士に相談するケースも多いです。
登記申請の内容を確認し、難しい場合は専門家への相談も検討してみましょう。
指定申請準備の注意点
法人設立が完了したら(法人の登記事項証明書を取得できたら)、訪問介護事業所の指定申請を行うことが必要になります。
訪問介護事業を行うには、都道府県または市町村から指定を受ける必要があります。
指定を受けるためには、人員基準、設備基準、運営基準を満たし、必要な書類を提出しなければなりません。
では、各基準の注意点を確認しましょう。
<人員基準>人員の確保
管理者、サービス提供責任者、訪問介護員の職種と人数が定められています。常勤換算の計算方法を正確に理解し、常に基準を満たす体制を確保することに注意しましょう。
自治体によって、サービス提供責任者や訪問介護員の人数など、独自の条件がある場合があるため、事前の確認が必要です。
まずは人がいないと開業ができないため、一緒に働きたい人への声掛けや、求人活動も並行して進めて行きましょう。
<設備基準>物件選び・設備の準備
訪問介護事業所には設備基準に合わせて、- 事務室(事業運営に必要な広さを持つ専用区画)
- 相談室(個室でない場合はパーティションなどで遮蔽しプライバシーに配慮する)
- 手洗い設備(感染症予防のため)
などが求められ、図面の提出が必要です。
事務室と相談スペースは、間仕切り等で区切ることが認められる場合もありますが、専用の区画が必要になります。
実際にどのくらいの人数で、どんなレイアウト・導線にするかなど、具体的にイメージすることも重要になるでしょう。
またその他に、「鍵付書庫」「事務機器」などの設備の設置の検討や、電話の他にインターネット回線や水道や電気なども必要です。 電話やインターネットは物件を決めてからでは遅いので、並行して準備を進めておくと良いでしょう。
詳しくは、厚生労働省のサイトもご確認ください。
(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999404&dataType=0&pageNo=1)
<運営基準>営業時間の設定
開業するにあたり、事業所の営業日・営業時間・サービス提供時間を決める必要があります。ただし、営業時間・サービス提供時間には注意点があります。 営業時間は管理者やサ責が常駐している時間帯で、事務所が開いている時間です。 これに対して、サービス提供時間は訪問介護員が利用者宅でサービスを行う時間帯です。
そのため、
- 営業日・営業時間は月〜金の9:00〜18:00
- サービス提供時間は月〜日 7:00〜20:00や毎日24時間
ということもあります。近隣の事業所などの営業時間なども参考に、検討してみると良いでしょう。
最後にこれらの基準を満たしたうえで、指定申請の書類を作成します。
指定申請の受付期間は限られており、指定日は原則毎月1日です。 申請日から指定日まで数ヶ月かかることが多いため、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。 また、書類に不備がある場合、申請が受理されず指定日が遅れることがありますので注意しましょう。
尚、社会保険労務士さんに相談することや、指定申請の代行をお願いすることもできますので、開業準備を正確に行いたい方や、準備の負担を軽減されたい方は、併せて検討することをおすすめします。
開業成功のためのポイント
人材の確保
指定申請の段階で人員基準を満たす必要があるため、早期から採用活動を開始することが理想的です。また管理者とサービス提供責任者は必須の人員です。
辞められてしまうと事業継続が難しくなるため、信頼できる人材を確保しましょう。
参考:東京都福祉保健局 訪問介護・介護予防訪問介護 人員配置基準に係る改正「サービス提供責任者の配置基準について」
(https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r040401_saseki_kijun)
経営者感覚
介護報酬は、サービス提供から入金までに約2ヶ月のタイムラグがあります。開業当初の人件費や家賃を賄うための十分な運営資金を確保しておく必要があります。
従業員のときは働いた時間(労働時間)は賃金をもらえますが、経営者になると売上が生まれなければお金はもらえないだけでなく、従業員の方へお給料が払えません。 そこで、より多くの利用者様を確保するための営業活動が必要になります。
訪問介護の利用者は、地域のケアマネジャーからの紹介が中心となります。 ケアマネジャーに対して、事業所の特徴や強み(他の事業所との差別化ポイント)を伝え、信頼関係を築くための定期的な訪問や情報提供をまめに行いましょう。
また営業活動の時間を確保するためにも、ICTを活用し事務作業を効率化して時間を作ることも重要でしょう。
同業他社との差別化
サービス業は一般的に「価格」と「サービスの質」で同業者と競争します。しかし、介護事業においては基本的に価格競争ができません。
そのため、同業他者との競争に勝つにはサービスの質の向上が必要になります。
そこで、サービスの質を向上させるための研修やケア内容の工夫などを考える時間が必要になります。
ICTを活用することで、業務効率が上がり時間が確保しやすくなるだけでなく、サービスの実施内容や利用者の状況をいち早く確認することができるようになります。
そのため、浮いた時間でケア内容向上につながる各所との調整ができ、サービスの質向上へつなげたり、ヘルパーに必要な研修をしっかり考えることもできるようになるでしょう。
まとめ
訪問介護事業所の開業の流れの中でも、指定申請は重要な手続きです。
働きながら、専門書で確認したり、自治体の相談窓口での相談するなどで、準備を進めていく方法もありますが、時間がかかるうえに、「これであっているか?」「準備に不足はないか?」不安を抱える方も多いかと思います。
弊社では、開業にまつわる専門家を紹介することが可能です。
また新規事業所でのICTの活用についても、事例と合わせてご案内することもできます。
気になる方は、以下のアンケートフォームからお気軽にお問い合わせください。
<監修> 本多 雄一
合同会社織都 代表社員 / 行政書士コンプライアンスハーツ 所長。関西大学卒業後、1999年に行政書士登録。
2000年の介護保険施行以来、長年にわたり介護事業所の人材育成や記録書類の整備に関わり、顧問先を通じて運営指導も経験。 2025年2月より介護事業コンサルに特化した合同会社織都の代表社員を務める。
合同会社織都 代表社員 / 行政書士コンプライアンスハーツ 所長。関西大学卒業後、1999年に行政書士登録。
2000年の介護保険施行以来、長年にわたり介護事業所の人材育成や記録書類の整備に関わり、顧問先を通じて運営指導も経験。 2025年2月より介護事業コンサルに特化した合同会社織都の代表社員を務める。
