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情報連携の標準仕様とは?導入のメリットは何?
要介護者が急増している現代において、すでに介護業界は慢性的な人材不足の問題が発生しています。介護に対するニーズは今後もより高まることが予想されており、少ない労働人口で高いニーズにどのように応えていくかが日本の抱えている課題です。
この課題に有効な対処法として注目を集めている方法が、介護業界のICT化。介護現場にシステムを導入することで煩雑な事務作業を簡易化できたり、情報共有をより密に行えたりと、多くのメリットが期待され、厚生労働省では介護業界のICT化を推進しています。
今回はICT化の1つの要素である“サービス提供事業所間における情報連携”について深堀。情報連携をスムーズにするための仕様を知り、業務の効率化を目指していきましょう。
情報連携の標準仕様とは
情報連携の標準仕様とは、サービス提供事業所間における情報連携の統一を目指した取り組みです。平成30年からこの取り組みは始まりました。
サービス提供事業所間でのケアプランのやり取りは毎月のように行われる業務であり、FAXや手渡しなど紙ベースで情報共有を行っていることが一般的です。
厚生労働省はこのアナログな方法を見直し、サービス事業所間でスムーズにデータ連携が行えるようにするための情報連携の標準仕様を定めました。
ICTを活用した情報連携を取り入れることでデータでの連携が取れ、業務の効率化が図れると期待されています。
情報連携の標準仕様によるメリット
情報連携の標準仕様を取り入れることによって得られるメリットについてみていきましょう。
業務の負担軽減が期待できる
介護サービス提供事業所間では利用者の予定や実績に基づく、ケアプランのやり取りが多く発生しています。
ただ、各事業所が業務効率化のために介護ソフトを活用していても異なるソフトウェアではデータを連携することができません。そのため、事業所間で書類のやり取りをする際は紙媒体にして行っていることが現状です。
情報連携の標準仕様を取り入れるとデータ形式の統一が図れ、紙だけでなくデータでのやり取りが可能になります。データでの連携が取れると、やり取りのたびに紙媒体での書類を準備する必要もないためスムーズなやり取りが実現でき、業務の負担軽減が図れると期待されています。
異なるソフトウェアでもデータ連携ができる
これまでは異なる介護ソフトウェアを使っている場合、データの互換性がないためにデータでのやり取りができませんでした。
情報連携の標準仕様に対応したソフトウェアを取り入れることで、異なるメーカーであってもデータ連携がスムーズにできるようになります。紙媒体にするために印刷したり、転記したりなどの業務が発生しなくなるため、業務の効率化はますますアップすることが期待できます。
まさにICT化にふさわしい情報共有の改革だといえるでしょう。また、ICT導入支援事業の要件の1つでもあるため、補助対象にもなります。導入コストをおさえて取り入れられる点も事業所にとっては大きなメリットであるといえます。
利用者に適切なサービス提供ができるようになる
サービス提供事業所間で行われる利用者情報は、生活環境や心身の状態、家族やご利用者の意向などが含まれた重要な情報です。
しかし、紙ベースのやり取りの場合、タイムラグが生じてしまったり、誤認や行き違いが発生してしまったりするケースもあります。
リアルタイムで密な情報連携ができる標準仕様を取り入れることで、サービス提供事業所間の連携が強固になることが期待できます。
やり取りがスムーズに行えるようになることで結果的に本来の業務を充実させることができ、利用者が快適だと感じるサービス提供の実現が叶うでしょう。
利用者の健康寿命を延ばすためにも関係者間でも密なやり取りは有効です。一部の地域に限らず、全国的に推進することで適切なサービス提供を受けられる利用者が増加するとみられています。
情報連携の標準仕様の項目とフォーマットとは
情報連携の標準仕様の導入はICT導入支援事業の1つの要件です。全国の介護現場で推進できるよう、厚生労働省委託事業がデータ連携のための項目やフォーマットの標準仕様を平成30年に定めました。
項目やフォーマットの仕様は以下のとおりです。
標準仕様の項目
項目は利用者の名前から住所、認定日、要介護状態区分など、利用者についての詳細がわかるような項目が設けられています。
「生活に関する意向」や「援助の指定」など、コメントの記載が必要な部分もありますが、「性別」や「認定状況区分」などは区分コードを選んで記載ができるようになっています。
介護業界で共通している項目なので、サービス提供事業所ごとに項目を変更する必要もなく、漏れなく情報提供し合えるメリットがあります。
標準仕様のフォーマット
サービス提供事業所間でやり取りが行われるケアプランをスムーズに行えるように標準仕様では以下の7つのフォーマットが展開されています。
- 利用者補足情報
- 居宅サービス計画1 表
- 居宅サービス計画1 表_削除
- 居宅サービス計画2 表
- 第6 表(サービス利用票)、実績情報
- 第6 表(サービス利用票)、実績情報_削除
- 第7 表(サービス利用票別表)
計画1には計画2と利用者補足情報を添付して送るなど、フォーマットを組み合わせることで情報を充実させながら連携が取れるような仕様になっています。
また、利用票を送ったものの、サービス提供ができなかった場合などに活用できる削除用のフォーマットもあるため、削除する情報もお互いに相違なく連携が図れます。
標準仕様データを送るときのマニュアル
業界全体での活用を目指している仕様なので難しいルールは設けられていませんが、基本的なマニュアルはいくつか定められています。ここでは、送付する際のポイントをご紹介します。
ファイル送信単位について
居宅介護支援事業所からは、居宅サービス計画1表や第6表(サービス利用票)のフォーマットを使ってケアプランを送付できるようになっています。
これらのフォーマットには情報を充足するフォーマットも一緒に送ることが求められます。
たとえば、居宅サービス計画1表には、居宅サービス計画2表と利用者補足情報を添付し、第6表(サービス利用票)には、第7表(サービス利用票別表)と利用者補足情報の添付が必要です。
このようなフォーマットの組み合わせをファイル送信の単位として、各ファイルに同じ連番をつけることで紐づけるようにします。受け取った側にもわかりやすい工夫をして送信することを心掛けましょう。
連番ごとに処理されることを想定して送信する
受け取った側はファイルの連番ごとに処理を行うことを想定して送付しましょう。たとえば、100と101のファイルがあった場合、100を処理してから101の処理に入るという流れです。
ファイル取り組み順序があることを想定して送付しましょう。
情報連携の標準仕様を取り入れてICT化を加速しよう
情報連携の標準仕様の活用はICT導入支援事業の要件の1つであり、国が推進しているものです。異なる介護ソフトメーカーを使っていてもデータ連携が取れることで、データでのやり取りが可能になり、より紙媒体を必要としない快適で効率的な業務が実現します。
取り入れることによって全国のサービス提供事業所とのやり取りがスムーズになるため、ICT化のメリットを最大化できる仕様であるといえるでしょう。積極的に活用していくことがおすすめです。