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介護の新しいかたち【科学的介護】今までと何が違うのか

『科学的介護』という言葉を聞いたことはありますか?厚生労働省が推進しているもので、データベースを活用して介護を行うという介護の新たなかたちです。

科学的介護を推進することで、介護業界に不足していた情報を取り入れることが可能になり、より利用者が安心できるサービスを提供できるようになったり、スタッフの負担軽減にもつながったりと、さまざまなメリットを得られることが期待されています。

今回は、この科学的介護の概要や必要性についてご紹介します。

科学的介護について

従来の介護と科学的介護はどのような違いがあるのでしょうか?まずは科学的介護の概要についてご紹介します。

そもそも『科学的介護』とは?

科学的介護とは、蓄積した介護記録の情報を活用し、客観的事実に基づいた根拠や情報(エビデンス)を利用者に提供することを指します。

介護サービスは本来、利用者が望む介護サービスを選択し、自立を目指していくというもの。しかし、これまでの介護業界は事業所独自の介護サービスを提供しており、選択する立場である利用者には、そのサービスの効果やリスクについての情報がなく、わかりにくいことが現状でした。

一方で医療業界では、多くの症例や看護記録、臨床結果を記録し、論文などを用いて情報を共有していることが一般的。このように知識の共有を行うことで業界内でエビデンスを積み重ねることができ、客観的で効果の高い方法を患者に示すことができています。

介護業界が提供する介護サービスの不透明さには、医療業界のような根拠や客観的な情報などのエビデンスが不足していたことに原因があるとみられ、介護業界でもエビデンスを集めていくことが利用者への安心につながると注目されています。

これまでの情報を蓄積し、客観的な事実に基づいた情報を『科学的根拠』といい、介護業界で適用することを『科学的介護』と呼んでいます。

科学的介護の蓄積と活用に必要なLIFEとは?

科学的介護の推進が始動したのは2017年のこと。2017年に厚生労働省で開催された「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」において、科学的介護を推進していくことが決められ、2020年から「介護に関するサービス・状態等を収集するデータベース『LIFE(旧CHASE)』」を本格的に運用していくことが決められました。

LIFE』とは、利用者の状態や介護ケア方法などのデータを集めるデータベースのことを指します。介護業界におけるエビデンスの蓄積や活用に必要なデータを収集するために開発されました。

今までの介護業界でも、通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム『VISIT』、高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム『CHASE』、この2つがすでにデータベースとして存在していました。

しかし、一体的な運営を開始させるために、この2つのデータベースは統合され、2021年4月から『LIFE』という名前で運用されていくことが発表されています。従来ではまかなえなかった情報も、幅広く収集できることが特長です。

LIFEを使った情報収集方法とは?

情報は厚生労働省が運営する専用のサイトを通して情報を提出します。専用サイトには事前に利用申請を行う必要があり、発行されたログイン情報から登録を行うことによってLIFEへ情報を提出することができるようになります。

情報を収集するには介護現場の協力が必要であり、多岐にわたる項目の情報提供が求められていますが、入力されるべき“基本的な項目”、“目的に応じた項目”が設けられているなど、現場の負担にならないような情報収集方法が取り入れられています。

科学的介護がもたらすメリット

では、科学的介護によって何が変わるのでしょうか。ここからは介護現場や利用者にどういったメリットがあるのか、ご紹介していきます。

利用者が適切なサービスを選べるようになる

高齢社会に突入している世の中で、介護のかたちは事業所によってさまざまです。利用者は数多く存在する介護サービスの中から、自分のニーズに適したサービスを選択しなければなりません。

しかし、利用者は介護のプロではないため、どの介護サービスが自分に適しているかは、わからないことが現状です。事業所によって異なるメリットやデメリットは、事業所の主観的な情報だけでは信憑性がありません。

科学的根拠に基づいた科学的介護の導入により、利用者は「何が自分に適したサービスなのか」「どのようなケアを求めているのか」を基準にして介護サービスを選択できるようになります。

客観的な情報を利用者に伝えることができるため、利用者はより安心して事業所選び・介護サービス選びができるようになることが期待できます。

自立支援や重度化防止などの効果が期待できる

介護サービスは利用者の自立支援や重度化防止のために行われているサービスです。しかし、明確な根拠のないまま介護サービスを提供すると、元気になっていくケースもあれば、衰弱してしまう場合もあることが現実です。

これまで蓄積されたデータや根拠に基づいた科学的介護は、科学的に効果が認められた介護ケアです。そのため、長年の経験や感覚ではなく、経験が浅いスタッフでも効果の高い介護サービスを提供できるようになります。

再現性の高い介護サービスの提供は、多くの利用者への自立支援や重度化防止に役立つと期待されています。

質の高いサービスが提供できるようになる

科学的介護は、自分が所属している事業所だけではなく、他の事業所のデータも蓄積されているため、参考となるデータが多数蓄積されることとなります。データを収集するLIFEは、このようなエビデンスを研究して介護現場にフィードバックするため、介護現場では根拠に基づいた介護ができるようになります。

さらに、介護サービスのマニュアルや情報管理の方法は介護事業所によって異なるもの。科学的介護を活用することで、現場によって異なっていた対応に一貫性が生まれます。業界全体のガイドラインができることによって業務が効率化されれば、スタッフにとって働きやすい職場環境が実現します。

LIFEと介護ソフトの関係

科学的介護を実現するためには、“LIFEへ情報を提供する”という手間や時間が必要になります。

この手間や時間を省けるツールが介護ソフトです。介護ソフトはあらゆるデータがすでに電子化されているため、データを簡単にLIFEへ取り込むことができます。介護ソフトは業務の効率化のために期待され、多くの事業所で導入が進んでいますが、科学的介護の実現においても注目されています。

ただし、すべての介護ソフトがLIFEに情報提供できるわけではないため、今後介護ソフトの導入を検討している事業所はLIFEに対応しているかどうかも合わせて検討を進めることがオススメです。

科学的介護の導入により訪れる未来

厚生労働省も推進している科学的介護ですが、はじまったばかりで課題もあることが現状です。

しかし、このデータの蓄積が進んだ5年後、10年後は活用できるデータが豊富になり、科学的な根拠に基づいた介護サービスはこれからの時代に定着するであろうとみられています。

データベースの活用は利用者の満足度向上につながるだけではなく、介護業界の努力を示す1つになるかもしれません。科学的介護を実現するLIFEはこれまでの介護の概念を変える大きなきっかけになるであろうともいわれています。

これまでの介護業界の概念を一新し、利用者の満足度の高い介護サービスの提供ができる介護の新しいかたちに期待です。

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